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2020/12/22

東南アジアのウィズ/アフターコロナの広報活動 ~広報・マーケ担当者が求められること~

こんにちは、シンガポールオフィスの谷です。前回に引き続き、先月発行のシンガポール商工会議所の会報に寄稿した記事を抜粋して、ご紹介したいと思います。

 新型コロナウイルスの流行により、イベントやキャンペーンなどの広報・マーケティング活動の中止・見直しが続いた2020年上半期。東南アジアではサーキットブレーカーや緊急事態宣言などの自粛期間、そして感染拡大を予防するためのさまざまなルールのもと生活を経験して、人々の生活はどのように変わり、今後の企業の広報活動に影響していくのでしょうか。 

 今回は広報の視点で、消費者、メディア、企業にみられる変化を、事例を交えながら紹介し、企業がどのようにステークホルダーとのコミュニケーションを変化・対応していくべきかを考察したいと思います。今回のブログでは、今後、広報・マーケティング担当者が求められていることについてご紹介いたします。

インクルージョンの意識
 シンガポールではインド人やバングラデシュ人などの低熟練労働者が暮らすドミトリーにて大規模クラスターが発生してしまい、これまでシンガポールの経済発展を陰ながら支えてきた彼らに対するリスペクトの気持ちが高まっているように思います。また、アメリカでの「Black Lives Matter」のムーブメントも同時期に起きたことで、シンガポールを中心とした東南アジアでは今まで以上にインクルージョンの視点が意識されているように感じます。

 例えばシンガポール最大の新聞The Straits Timesが4月中旬に「Home-based learning -a look at three homes」という、自宅学習をどのように行っているか3つの家庭に焦点を当てた記事を掲載したのですが、裕福な中国人家庭、低所得のマレー人とインド人といった、人種のステレオタイプを感じさせる内容でFacebookを中心に炎上しました。結果的にThe Straits Timesは自社媒体のWEBフォーラムにてレター形式で謝罪文を掲載しています。

 さらに100万人フォロワーを誇る人気インスタグラマーJamie Chuaは「ドミトリーに住むインド人が一気に家によし寄せてきた悪夢を見て気分が優れない」といった内容をInstagram Storiesに投稿し、炎上。その後同じくInstagram Storiesにて謝罪文を投稿し、外国人労働者を支援する2つのNGO団体に寄付することを伝えています。

従業員というステークホールダーへの意識を忘れずに
 東南アジアの広報やマーケティング担当を対象の調査によると、今回のパンデミック下で優先すべきステークホルダーは一番目に従業員だと半数以上が回答しています(二番目にお客様と回答)。大きな理由としては従業員の解雇や給与カットなどを余儀なくされた企業も多く、経営者の判断のタイミングやそれに伴う対応は炎上の可能性もあり、すべてのステークホルダーから注目されているからです。

 6月にはスーパーアプリのGrabが従業員の5%である360人を解雇し、Grabの共同創業者兼CEOがステークホルダーに向けて配信したブログが話題になりました。ブログでは解雇者に対して次の職探しや持ち株の保有許可などを含むさまざまなサポートについて言及しており、厳しい状況下の中でも可能な限り従業員に寄り添っている姿勢を感じます。ネガティブなニュースをネガティブなストレートニュースで終わらせず、企業のビジョンやカルチャー、そして真摯な姿勢を見せることが重要です。


Grab 公式サイトより

広報・マーケティング体制の見直し
 シンガポール独立以来最悪のGDP成長率を見込んでいる今、新型コロナウイルスへの対応は長期戦になることが予測されます。シンガポール人の雇用を守るため、外国人の雇用はハードル(コスト)が更に高くなり、シンガポール人材開発省によると2020年に入り5月までで既に6万人の外国人が失業したと発表されており、我々日本人へも逆風が強まっていると言ってよいかと思います。

 職場が閉鎖され、東南アジア諸国への出張ができなってしまった今、シンガポールにおける日系企業はどうなっていくのでしょうか。地域統括会社はセールス以外の部門はスリム化、地域統括会社としての機能の縮小がさらに進み、シンガポールからではなく日本本社から指示ができる体制構築が求められていくことが中長期的に予想されるかと思います。それに伴い、ローカル人材の育成の急務、また内製だけでなく外注先パートナーを活用することも増えると考えられています。

ハイブリット型のコミュニケーションエキスパートに
 Eコマースが主流になり、コミュニケーション予算に対する費用対効果が見えやすくなったことから、目の前のプロモーションやデジタルへの予算が増えたことで、広報・マーケティング人材は動画やクリエイティブの企画・作成、ソーシャルメディアの管理などの業務を担当する機会が増えているのではないかと思います。また、これまで行われてきたイベントや現場取材などの伝統的な広報活動がオンラインシフトをしたことで、例えばオンライン記者会見をするにあたり、会見の司会やファシリテーションを担うケースも多かったのではないかと思います。このように、広報・マーケティング人材はこれまで以上に時代のニーズにあわせ、幅広い業務を柔軟に実行していく能力が求められているように感じます。

 今回、記事3回に渡って、新しい生活様式に合わせ消費者のデジタルシフトが加速し、メディアや企業もさまざまな変化が起きていること、またそのうえで、広報・マーケティング担当者が今後気を付けていくべきことを紹介させていただきました。予測不明の将来に不安を感じやすい時期ですが、コミュニケーションのエキスパートとしてパンデミックに限らず、日々多様に変化していく社会に寄り添いながら、その時代にあった方法で、さまざまなステークホルダーとの関係構築を目指せるよう、日々精進していけたらと考えています。

 

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