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2024/11/29

~国慶節に20億人弱が大移動する中国~ PR活動に取り入れたい、中国人の最新旅行トレンド

訪日外国人数は中国人がトップに返り咲き、3か月連続首位をキープ

中国には、年初の1月から2月の時期に春節(旧正月)と、10月1日からの国慶節という、およそ1週間程度の大型連休が2つ存在しています。春節についてはお正月であることから、実家に帰る国内の旅行・移動が多くの割合を占めますが、国慶節は国内外への旅行を楽しむ休暇として利用されることが多く、人気の旅行先や消費の傾向が見えやすくなります。

中国の大手旅行サイトCtrip(携程)の発表によると、外国の旅行では日本が最も人気で、2024年の国慶節における日本への旅行予約数は前年比44%増で過去最高を更新しました。また、JNTO(日本政府観光局)の発表しているデータでも、7月から3か月連続で訪日外国人数のトップは中国からの旅行者となりました。

2023年の8月に日本への団体旅行が解禁されたものの、個人旅行はまだビザの発給条件等の問題から回復しきっていないと言われている中でのこの結果から、今後まだ中国人訪日客数は伸びるであろうと言われています。

Ctripによると、2024年の国慶節は、コロナ前の2019年よりも海外フライトの数が増加。特に、地方都市在住者の海外旅行数が3倍にまで増加しました。

中国観光客のコロナ禍前後での行動の違い

新型コロナウイルス感染症の流行により一時的に断絶してしまったものの、それ以前はインバウンドブームとして「爆買い」や旺盛な消費が見られました。中国人観光客もそれに漏れず、訪日リピーターが増加しており、団体旅行から個人旅行へのシフトが進み、SNSの影響もあって、旅行先の多様化が進んでいます。

観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、訪日中国人の観光客の年齢層としては、女性では20〜29歳が最多で全体の17.4%、男性では30〜39歳が最も多く、次いで2番目が20~29歳で、全体の12.1%を占めています。このような背景を踏まえ、中国人の若年層に向けたプロモーションを展開する際には、彼らがどのような旅行スタイルを求めているのかを理解することが重要です。

今回は、特に中国の若者の間で人気のある旅行スタイルについて解説します。

2024年の若者の旅行トレンド

(1)听劝式旅游(アドバイスを聞く旅行)

「听劝式旅行」とは、事前準備をせずに、SNSで地元の人や他の観光客からのアドバイスを頼りに行動する旅行スタイルです。若者たちは目的地を決め、チケットを購入して出発し、SNSに「おすすめスポットや美味しい食べ物を教えて!」と投稿します。その後、寄せられたアドバイスに従って旅の過程を楽しみます。

中国のSNS「小紅書(RED)」上で、「もうすぐ武漢市に着くのだけど、アドバイス求む!」と投稿すると、コメント欄に1,000件以上の「どの店に行くべきか」「何を買うべきか」などの具体的なアドバイスが寄せられている。

若者は、一般的な旅程として有名観光地に行くだけにはとどまらず、地元民ならではの体験を求めており、SNSでのアドバイスが旅行先での行動に大きな影響を与えています。

実際、中国のSNS「抖音(ドウイン、TikTokの中国での名称)」でキーワード「听劝(アドバイスを聞く)」が含まれた動画の再生数は40億回を超え、「小紅書(RED)」では、「听劝(アドバイスを聞く)+旅游(旅行)」のキーワード投稿は約860倍にまで急増したということです。

地元の人や、既に訪れたことのある人たちが「アドバイスを聞いてから行って良かった」「聞かずに行って後悔した」といった内容で観光先で気をつけるべきこと・おすすめのスポットを投稿。

最初はオーガニック投稿を中心に旅行先での行動を大きく影響されますが、このトレンドでうまくプロモーションをすることで、目的地選びまで影響するケースもあります。

例えば中国の各市観光局はこのトレンドを活用し、SNSで地元の魅力をアピールしています。局長が動画に登場したり、一般の投稿に対して現地の観光スポットをアドバイスとしてコメントをすることで、若者との距離を縮めたプロモーションが行われています。ハルビン市はこの戦略で成功し、2024年の元旦の3日間で304.79万人の観光客を迎え、59.14億元の収入を達成しました。

吉林省の観光局の局長がSNS公式アカウントの動画で観光スポットをアドバイス

(2)City Walk  (町でぶらぶらすること)

人のアドバイスを聞く「听劝」スタイルのほか、2022年から、中国の若者の間で急速に人気が出ている旅行スタイルがあります。SNSで投稿された路線のおすすめ店やグルメ攻略を参照に、「探店」(店を訪れる)をしたり、街をぶらぶら歩くことで偶然の発見も楽しんだりするスタイルです。最初は、個人のSNS投稿から話題になり始めましたが、次第に友人とのグループやイベントとしても楽しまれるようになり、特定の旅行スタイルとして確立しました。中国各地の文化観光局はこれに応じて、公式のシティウォークルートを企画しました。 このブームは関連産業の売上増加も促し、例えばロードバイクの売上 は80%以上増加しました。

City Walkに続き、最近ではCity Ride(ロードバイクで街をぶらぶらすること)が新しいトレンドとなっています。さまざまなロードバイクで人気を集めるインフルエンサーも登場しています。

このように、明確な目的地を持って旅程に詰め込み、効率的に色々な場所を回るよりも、急がずに、ゆとりをもって低炭素かつ低コストな方法で街の隅々を楽しむことが、若者の間で求められる旅行スタイルの一つとなっていると言えます。日本の旅行に関しても、「日本旅行攻略」としてSNS上に投稿されている内容を見てみると、直近でCity Walkを含むキーワードの投稿が増加しており、エンゲージメントも良好です。それ以外にも、日本でもロードバイクで旅行しましょうという投稿が増え続けています。

REDでの日本でCity Walkおすすめな路線の投稿

(3)系/反向旅游  

「仏系旅行」/「反向旅游」とは、休日の混雑を避けるために、ますます多くの若者が目的地を小さな都市や町に定め、計画を立てず、急がず、定番スポットを巡らない旅行スタイルを指します。これにより、独自でゆったりとした休暇を楽しむことができます。

最近、国内の寺院観光が若者の間で大ブームとなり、2023年以降、寺院関連の観光スポットのチケット予約数は前年比で310%にまで増加しました。その予約者のうちの50%が、90年代生まれと2000年代生まれだと言われています。

これは中国の「躺平(横たわる)」文化と密接に関連していると言われています。就職や経済的なプレッシャーから解放されたい若者たちは、寺院などの場所で異なる体験を求めるようになっています。これに応じて、多くの寺院はIPの開発や特色ある飲食、壮大な風景や、荘厳な寺院の様子、静かに流れていく時間などを動画で発信することを通じて若者を惹きつけています。

杭州市の永福寺で提供されるコーヒーが大人気で、多くの人が一杯を求めて長い列を作っています。西安市にある古観音禅寺の銀杏の古木は、中国国内外で大きな話題となり、人気を集めています。

中国の大手旅行サイト 「Qunar(去哪儿网)」のデータでも、中国国内のあまり知られていない都市の観光地としての人気が急上昇しています。多くの若者が大都市から小さな都市に移動し、ゆったりして時間を過ごす以外、手頃な価格で高級ホテルのサービスを楽しめることや、美食はローカル的で安いなど、物価が安いことも小さな都市が人気になり続けている理由です。

日本に関しても、「Ctrip(携程)」によると、「東京・大阪・京都以外の旅行地を予約する傾向が強まって」いるようです。定番の観光地に加え、熊本や伊豆、名古屋などでも多くの中国人観光客が見られ、横浜市や岐阜県の高山市では予約数が前年の約2倍に達しています。また、静岡県の東伊豆町の温泉地も、リラックスを求める旅行者に人気です。

今中国の若者は旅行を通して、情緒的な価値、ローカル的な文化を味わうこと、「コト」消費で体験を重視する傾向があります。また広告やPRも、今までのように派手なことよりも、親しみやすく心と心の距離が近くなるような施策が心に響きやすいです。

プラップジャパンでは、Z世代のインサイトを研究し各種施策に生かすような、チーム横断での若年層向けプロジェクトを運営しているほか、中国をはじめとした諸外国における流行を取り入れた各種施策をご提案・実施しております。

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