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2024/02/20

中国で大ブーム IPコラボキャンペーン

プラップチャイナの中竹です。昨年中国では、日本でも報じられるほどの話題を呼んだ、コーヒーチェーンである瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)と高級白酒の茅台(マオタイ)酒とのコラボキャンペーンなど、多くのIPコラボプロモーションが行われました。今回は、このIPコラボがどうして中国でこれほど盛んに行われているのか、また、中国でのIPコラボの特徴などについて見ていこうと思います。

<そもそもIPコラボとは>

まず、IPとは、英語のIntellectual Property、知的財産の略称となります。難しく言うと、知的活動によって生まれた作品やアイディアとなりますが、一般的には、特に日本ではアニメや漫画、ドラマなどの作品やキャラクターを指します。ただ、知的財産はこれだけにとどまらず、映画や音楽なども含まれ、特に、中国では文化遺産やスポーツ大会、アーティストなど、権利関係全般を含めることもあります。IPコラボビジネスは、そんなIPとコラボレーションをして、商品開発や広告、イベント開催などを展開するビジネスのことです。実務上は、ある会社がお金を払ってIP権利を使わせてもらうという形を取りますが、IPそのものも、コラボ先の会社と重ねられることでイメージが向上したり、その会社の販路や露出を利用してIPの普及をはかったりすることができ、相互メリットが生まれます。

<なぜ中国でIPコラボが盛んに>

現在の中国では、これまで以上に、消費の主役と言われるZ世代(おおよそ1995年~2009年生まれ)に代表される若者たちが、趣味や嗜好が細分化し「圏層」と呼ばれる共通の趣味嗜好を持つグループを形成していると言われます。そのため、ますます狙ったターゲットにアプロ―チすることが難しくなっているほか、各商品ジャンルにおける競争も激しく、多くのコストをかけてプロモーションを幅広く行う必要が出ており、いわゆるKOL(Key Opinion Leader、インフルエンサー)を含むタレントの起用にかかる費用も高騰しています。同じレベルの有名タレントを広告に起用するのにかかる費用の絶対額は、日本の数倍に達しているのが実情です。

また、Z世代の可処分所得は、全国平均(2,682元)の1.5倍、4,193元にもなり、人気IPの周辺商品に対して出費を惜しまないと言われています。更に、SNSネイティブで、自分の好きなもの、気に入ったものをSNSでシェアすることに抵抗がなく、趣味性嗜好性の高いIPコラボ商品をSNSを通じてシェアすることも期待できます。これらの理由から、中国の各企業は、特に消費の主役であるZ世代に対し、より効率よく、コラボ先のIPの知名度や人気を活用してブランドイメージを向上させたり、興味や関心を引き出したりすることを狙い、こぞってIPコラボを実施する状況が生まれているのです。

<中国でのコラボレーションPRの特徴は>

では中国では、どのような業界業種がコラボレーションを行っているのかを見てみます。2022年3月から2023年2月までの664件のコラボ事例を対象として行われたある調査によると、業種別では、1位は食品飲料、2位は服飾、3位は外食系と、おおよそ日本での印象と変わらない業種がトップを占めています。運輸系や建設建築系は入っておらず、裾野の拡がりは日本に比べるとやや狭い印象を受けます。IP市場自体の中国での伸長状況を考えると、今後IPコラボがより広い分野に広がっていく可能性も十分考えられます。2023年1年間で、印象に残ったIPコラボ事例について尋ねたアンケート結果を見てみると、上位にコーヒーチェーンのラッキンコーヒーやミルクティーチェーンのHEYTEA、奈雪の茶といった食品飲料系が多く入っていることがわかります。

私が住む上海では、いわゆる日本でも流行した「タピオカミルクティー」にとどまらず、フルーツやチョコレートを混ぜたり、お茶の種類も色々選べたりするような「奶茶(ナイチャー)」と呼ばれるミルクティーチェーン店が乱立しています。競争も激しく、まさに複数のチェーン店が常にIPコラボをしているような肌感覚があります。

<IPコラボのの効果測定>

これだけ多く中国市場で行われるIPコラボですが、実際どのくらいの効果があるのでしょうか。印象に残ったIPコラボの調査で1位となったマオタイとラッキンコーヒーのコラボを通してみてみたいと思います。

マオタイ酒は中国では高級酒として知られていますが、若者たちは白酒だけでなくアルコールを飲む習慣も減少傾向にあり、どう彼らにアプローチするかが課題となっていました。対して、ラッキンとしては、コーヒー店の競争に埋没しないよう、企業としてインパクトのあるキャンペーンを行うことで差別化を図り、消費者の目を向ける必要がありました。そこで両社はタッグを組み、マオタイ酒入りのラテを開発、マオタイ酒の瓶と同じ柄の紙袋を用意するなどのキャンペーンを開始しました。その結果、コラボラテは発売初日に500万杯を売り上げ、その額は1億元超(20億円超)といういきなりの大ヒットに。日本でも報道されるほどの昨年を代表する一大キャンペーンとなりました。

マオタイ酒は、ラッキンとのコラボ後も、間髪入れずにチョコレートのDOVE(德芙)とのコラボチョコを発売し、こちらもネットで予約が取れないほど人気を博しました。しかし、そういった販売の好調さとは反対にその後マオタイ酒の株価は低下してしまったのです。マオタイの董事長はその後、「当分コラボはしない」と発言しています。短期的には売り上げも認知度も驚異的にアップしたとしても、それが逆にマオタイの高級感のあるブランドイメージを毀損する可能性がある、そう株主たちが判断したとみられており、IPコラボの難しさを物語っています。このキャンペーンは、マオタイ酒の若年層化を狙い、意図して従来の高級イメージとのギャップを用いたものでしたが、それが既存ブランド資産を削ってしまう可能性を示しています。

では、このコラボをラッキンコーヒー側からも見てみましょう。プラップチャイナでは、ソーシャルモニタリングシステムを使い、昨年1年間のラッキンコーヒーについての全ネットワーク上のオーディエンスボリューム(ネット上で話題になった度合)を週別で追いました。その結果、ラッキンコーヒーは昨年中、14回もIP関連だけでコラボキャンペーンを行いましたが、キャンペーン中にネット上での話題にされる度合いが伸びていることが分かりました。

今年に入って、ラッキンとマオタイが再度、コラボラテを1月22日から発売しました。「今後はコラボをしない」と宣言していたマオタイの董事長が、なぜその判断を覆し、再びラッキンとコラボすることにしたのか。やはり、意外な組み合わせでのコラボによって一気に認知度が上がったメリットを改めて見直したからと考えられるでしょう。

 

IPコラボは、中国市場でのブランド力を一気に高め、浸透させたい日系企業の皆さんにこそおすすめの方法です。実績が豊富なプラップチャイナならお客様の個別のご要望に合わせて、IPコラボについてのご相談・ご提案が可能です。ぜひお気軽にお問合せください。お問い合わせは、こちらから。

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