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2023/08/23

処理水海洋放出で日系企業の広報はどう対応するべきか

プラップチャイナ上海オフィスの中竹です。先日、福島第1原発の処理水海洋放出をめぐって、どのように中国の日系企業の広報担当者が対応するべきか、中国広報(公共関係)協会理事を務める左跃氏をゲストにお迎えし、オンラインセミナーを実施致しました。セミナーには、北京や上海に勤務される日系企業広報担当者の皆様に数多くご参加いただき、ゲストの左氏は、自社製品の安全性を、データによる裏付けのもと、理性的に訴えていくことが大切だと話しました。

中国人が過剰反応する理由                                                          左氏はまず、中国政府の「処理水放出に反対している」「放出計画の停止を求めている」という主な二つの立場を紹介し、このような方針が、中国国内の世論に影響を与えていると説明しました。中国国内の反応としては、「本当に安全ならばなぜ日本の湖に放出したり、工業や農業用水として使わないのか」「海洋放出が唯一の案なのか」「長期的な影響はわかっているのか」という3種類のものがあると紹介。そして、人間が元々持つ、未知のものへの反応として起こる「恐怖」と「緊張」といった感情から、抵抗感を人々が抱くようになり、排斥といった動きにも繋がっているとしました。

中国においては、処理水が未知なものと強調されているため、人々は周りの反応、政府の態度に非常に影響されやすくなっていること、また、理性的な判断ができなくなる可能性があるために、排斥の対象が、食品、化粧品からその他の生活用品、またナショナリズムと結びついて日系商品全般にまで広がる可能性も指摘しました。

理性的なコミュニケーションを維持する6つのキーワード
では、このような状況下で、日系企業の広報担当者はどのような対応を取ればいいのでしょうか。左氏は、海洋放出後、ますます非理性的な感情的な声が高まると考えられることから、企業担当者としては、理性的なコミュニケーションを維持することが不可欠だと話します。そして、コミュニケーションにおける、以下のような6つのキーワードを挙げ、性質に注意した上で、施策を検討する必要があるとしました。

 「互恵性」 相手は、自分の態度と同様の態度を取りがち。こちらが寛容になれば、相手も寛容になる。
 「独自性」 ユニークな手法を取れば、影響力も大きくなる。他社に先駆けた安全検査などで注目度も高まる。
 「集団心理」 口コミによって商品に対するイメージも左右され、購買行動も影響を受ける。
 「権威性」 専門家やKOLなど、一定の権威を持った人の声が説得力を持つ。
 「一貫性」 態度をぶれさせず、「日本製品の品質は高いまま一定である」ということを伝える。
 「嗜好性」 好む/好まないという感情に訴えることも重要。

さらに、一企業として、政治的・外交的な態度表明は避けて、あくまで自社製品の安全性を、比較・ロジック・データを用いて、冷静に訴えることが重要と付け加えました。

処理水と直接的な関係がない企業も、注意が必要
参加者からは、「食品や化粧品ではなく直接関係の薄い業界だが、どのように対応すればいいか」「生産工場が、福島原発の立地に近い都道府県にある場合どのようにユーザーに答えればいいか」といった質問が投げかけられました。

左氏は、「直接関係のない業界であれば、これまでとの『一貫性』を重視して、これまでのコミュニケ―ションを維持し、信頼を保つことが重要」「事実を正確に答えることはまず重要。テクニックであやふやにしてはいけない。ただし、製品に問題がないということをデータで示すべき」などと答えました。

プラップチャイナでは、中国における危機管理についての経験豊富なスタッフが多数在籍しております。危機管理マニュアルの制作から、日常のモニタリング、報道分析、危機発生を模したトレーニングプログラムまで、幅広く危機管理広報の支援を行うことが可能です。お問い合わせは、こちらから。

 

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