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2024/02/05

「春節」における中国プロモーション事情

プラップチャイナの中竹です。中国の皆さんが1年で最も大切にする祝日である「春節」(旧暦の正月、今年は2月10日)が近づいてきました。地元の学校は春節休みに既に入っているほか、春節の帰省Uターンラッシュに伴う特別輸送体制「春運」も1月26日に始まって、スーツケースを持つ人が多く見られるなど、上海の街も何だか浮足立っているような雰囲気です。今回は、この春節にちなんだプロモーションについて見ていきたいと思います。

<広告クリエイティブやPRに活用される赤色モチーフ>
日本の皆さんも、中華街での春節を祝う様子や、中華圏での春節についてのニュース等で見られたことがあるかもしれませんが、この季節は特に街中「赤」で埋め尽くされます。中国では「赤」が熱意・奮闘・団結を表す、民族・文化・精神的な象徴とされ、ラッキーカラーとしても特別な意味を持ちます。また、古くから言い伝えられる故事に、新年に村を襲う「年獣」を赤色で追い払ったというものがあり、春節の様々な飾り物(提灯、札など)には「赤」が用いられます。当然、この時期に流れる広告にも、赤が多く用いられます。

上海のマンションやビルのエレベーターには、広告の流れるモニターがついています。この時期にエレベーターに乗る度に目に入ってくる広告の多くが「赤」をメインに使用している印象です。

各社赤を基調にした広告を打つことが多いですが、元々赤をテーマカラーに持つコカコーラは、ここぞとばかりに毎年春節に「赤」を前面に出す広告を打ち、「家族団らん」などをテーマに、多くの人が故郷に帰る中国の人々に寄り添ったメッセージを発信しています。今年は、干支である「龍」をテーマに、「ドラゴンダンス」を取り上げ家族間の心の交流を描く動画を作成し、Weibo(微博、中国版Twitter)などで配信をしています。

<中国市場への浸透のカギは文化に根差したローカライズ>
今からちょうど10年前に遡るのですが、現在10億人以上のアクティブユーザーがいるWeChat(微信、中国版LINE)も春節に絡んだキャンペーンを行い、一気に決済機能であるWeChatペイのユーザーを伸ばしたことがありました。その名も「紅包」機能です。赤い封筒を意味する「紅包」は、日本での「お年玉」に似ていて、春節に年長者が年少者にお金を包んでプレゼントする風習です。他にも、結婚式でのご祝儀も「紅包」と呼ばれます。WeChatはこの「紅包」をWeChatペイ上でできるようにし、しかもちょっとした「ゲーム機能」も加えて、楽しく参加、受け取るにも心理的なハードルをなくす工夫をしました。

仕組みはこうなっています。「紅包」を送る人は、複数人が所属するチャットグループに対して、「紅包」を送る際、「何人に対して」「総額いくら」送るかを設定することができます。その「紅包」がグループに送られると、クリックした人がランダムにもらえる金額が割り振られることになるのです。「紅包」が送られるとクリックするまでいくらもらえるかわからないドキドキ感があり、また総額「200元」(日本円で約4000円)と多額でもないため、送る方ももらう方も心理的なハードルはそれほど高くなく、この春節を祝う「ゲーム」に参加することができます。

この「紅包」で得たお金を銀行口座に戻すために、多くの人がこのキャンペーンのためにWeChatアカウントと銀行口座を紐づけました。ある調査によると、キャンペーンの最初の8日間で、800万人以上の人が「紅包」を受け取り、トータルで4000万件もの「紅包」が送られたということです。大晦日(除夕、旧暦の正月前日)には、1分間当たりなんと約25,000件もの「紅包」が開封されたとのことです。

私自身も中国人の多く入るWeChatグループで、春節の新年の挨拶とともに、この「紅包」が送られてくるのを体験しました。私は何が起こっているのか当時はよくわからなかったのですが、メンバーたちが嬉々として喜びのスタンプを送り合っているのが印象的でした。このキャンペーンは、中国の伝統的な「春節」の習慣が、現代のソーシャルネットワークサービスに出会い、また人々の「つながりたい」という欲求にうまく合致して大成功を収めたものと言えるでしょう。

<春節プロモーションのキーワードは「家族」「団らん」>
中国における決済機能で、WeChatペイと並んで双璧をなすアリババ系のAlipay(支付宝)も、春節にちなんだキャンペーン「集五福」を2016年に開始しました。これは街中にある「福」という文字をアプリ上のARを使った仕組みを使ってスキャンすると、その度に、割引券などの当たる抽選ができたりするほか、家族や知り合いがゲットした「福」をもらったりして、最終的に5つ集めると、大晦日(除夕)に総額3億元(約60億円)の日本で言う「宝くじ」にも参加できる、というキャンペーンです。

9年目の2024年今年には、協賛する業者機関の数は過去最高の約4万を記録し、全国185都市で20万店舗にオフライン“福引き所”が設置されるということです。このキャンペーンも、ARなど最新のデジタル技術を用いながらも、家族や知り合いと「福」を共有する、という仕掛けが施されており、家族や親戚とのつながりを大事にし、故郷に親戚が一同に会す春節の風習に従って作られていることがわかります。

プラップチャイナは25年以上中国でプロモーションを行ってきた実績があり、中国の文化や習慣を踏まえたご提案が可能です。中国市場でのPRキャンペーンを検討されている方は、ぜひお気軽にお問合せください。お問い合わせは、こちらから。

 

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