プラップジャパンは中国北京・上海の2都市にオフィスを構えており、現地駐在員による最新情報を常にアップデートしています。2022年、上海市では新型コロナウィルス感染症の終わりのない流行に対して遂にロックダウンの実施を行いました。
今回は番外編として、弊社駐在員によるリアルな体験レポートをお送りします。
予期しなかった上海ロックダウン
プラップチャイナの瓦井です。報道等にてご存知の方も多いかと思いますが、2022年3月末から5月末までの間、上海市は市民の外出を原則禁止し、ほぼ全市民がいわゆる「ロックダウン」下に置かれることとなりました。今回のブログでは、それを経験した当事者として、感じたこと、目にしたことなどをお伝えしたいと思います。
なお、今回のロックダウン(※外出禁止の封鎖環境を本稿ではロックダウンと呼びます)では、在住の区~街道等の行政区分によってかなり経験している内容にバラツキがあり、普遍化して語れるようなものではなく、情報に偏りがあることはご承知おき下さい。
物流の停止による不安と不満の増大
上海市は、人口約2,600万人の巨大な経済都市ですが、そのほぼすべての人々が消費者としてだけの側面になる、つまりは生産者・サービス提供者としての経済活動が停止し、消費するだけになるという事態は前代未聞ではないでしょうか。血管としての物流も停止し、物資不足、もしくは物資があっても運べないなど、ロックダウン初期には大きな混乱が見えました。特に、開始当初は急なアナウンス、かつ5日間の期限を設けていただけに、各個人の食糧の備蓄には限界があり、生きるための必要最低限の物資が不足していることで苛立ちも多く見られました。
私個人の話をすると、上海での食事は基本的にはデリバリーか外食というスタイルで自炊をまったくしなかったため、非常に苦しみました。カップラーメンなどのインスタント食品は多少常備していたものの、それも限りがあり、日一日と減っていく備蓄の品に空腹の胃がさらにキリキリさせられました。街道からの配給が始まってからも、食べ慣れないインスタント食品などにどうしても適応できず、困り果てていましたが、最終的には非常に幸せな形でロックダウン生活を終えることができました(理由は後述します)。
メディア信頼度の変化
ロックダウンが始まる以前より、上海市のコロナウイルス感染者の拡大状況や、市の取る施策などについては、Wechatの上海市公式広報アカウント「上海発布」で情報発信がなされていました。ですが、ロックダウンが本来の終わりである5日間の期限を越えて延長されると、一向に期限が示されないこのアカウントからの情報は次第に気に留めない人が増えた印象があります。
一方で、自らの居住する区や街道ごとの情報に対してはより敏感になっていきました。ロックダウン途中から、感染者陽性状況に応じて小区が3つのランクに分けられ、それによってマンション敷地内の外出など行動の自由の制限度合いが変わるので、特にアンテナを張っている人が多かったです。また、近隣の小区の様子(あそこで陽性者が出た、「大白(感染予防のための白い防護服に身を包んだ人のこと)」が来ていた、など)も物資の団体購入のために作られたマンション住民のグループで盛んに語られました。
自分たちの住むエリア外のことは物理的に全く知ることができなくなったため、各小区の様子はSNS上にアップロードされた写真や動画で知ることとなりますが、正確な情報を得ることよりも、他の小区で起きた事件や出来事を取り上げて話題にするようなことのほうが多かったように思えます。そして、それが政府側にとって不都合な内容だったりする場合(例えば、PCR検査の際に暴力的な行為が見られたり、持病を抱えた方の救急搬送が遅れて亡くなってしまったりなど)には、SNS上の投稿は削除されるというような場面も見られたように思います。
ただ、今回、特徴的だったのは、手を変え品を変え、しつこいほどにアップロードされつづけたコンテンツが沢山あったことです。上海市民の切なる声を集めた動画は、ロックダウン期間中何度も制作され、SNS上にアップロードされるやいなや多くの上海市民が拡散、しかし当局側に見つかり削除。何度かアカウントを変えてアップロードされ削除されを繰り返すと、サムネイルにまったく別の画像を掲げるも中身は一緒の動画だったり、左右反転させていたり、など、いたちごっこのヒートアップが通常のそれとは段違いだったように感じました。それほどまでに、上海市民は苦しみ、怒っていたのだと思います。
PRで日中の懸け橋に
本当に一部分しか紹介できずじまいでしたが、最後に、私がこのロックダウン生活を経て感じたことを少し述べたいと思います。
私は2014年から中国に駐在していますが、尖閣諸島問題などの大々的な反日運動を体感したことはなく、いわゆるチャイナリスクは今後の企業活動における一要素になっていくだろうと思っていました。しかし、このような形で、自らの生活、ひいては、大げさでなく、自らの生命が脅かされるような事態にもなりうるのだと体感した今では、個人の生活レベルでも警戒をしていかなければならないと気を引き締めました。
今回、中国の方々の温かさに文字通り命を救われたということも付け加えておきます。
前述の通り、私は食生活をデリバリーに依存していたため、自炊道具はすべて捨ててしまっており調理ができず、配給された野菜などの食材をなにも活かせない状態でした。せっかくの貴重な食材を、必要としない人間の手元に置いてむざむざ腐らせてしまうのはもったいないので、マンションの管理人に「困っている人にあげてくれ、私は自炊するすべがないから、これを活かせない」と伝えたところ、一通りこちらの食糧状況を心配してくれたうえ、「マンションの管理チームで食べているまかないであれば、一食分くらいあげることはできる。中国料理は食べられる?」と本当に優しい提案をしてくれました(しかも好みかどうかまで聞いてくれるという丁寧さ!)。
この頃にはもう、ロックダウン生活を生きのびることができるか否かという状態だったので、図々しくも好意に甘えることにし、結果的に一日二食、食事を分けてもらえることになりました。前述の通り、行政の強引なやり方に辟易していた自分にとって、この思いやり自体が言葉にできないくらい嬉しく、そしてようやくありつけることができたあたたかい食事を目にした瞬間、涙がこぼれそうになりました。
実は、このロックダウン後、中国からは帰任をしたのですが、最後の最後で中国の方たちの温かさに触れることができ、必ずこの恩は返していこう、たとえそれが本人たちに対してでなくとも、中国の人たちになにか恩返しができるように今後の人生で頑張っていこうと思いました。
SNSの規制についても少し触れましたが、2021年10月に中国政府は民間企業のテレビや新聞、ネットメディアなど報道事業への参入を禁止する法案を公表しました。メディア環境が刻々と変化を遂げる中国の中でPRをどのように展開すればよいのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。プラップジャパンでは現地の最新情報を踏まえながら、お客様のご要望に合わせた情報発信に関わるコンサルティングから実施支援までサポートいたします。是非お気軽にご相談ください。
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