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2020/12/02

東南アジアのウィズ/アフターコロナの広報活動 ~メディアの変化~

こんにちは、シンガポールオフィスの谷です。前回に引き続き、先月発行のシンガポール商工会議所の会報に寄稿した記事を抜粋して、ご紹介したいと思います。

 新型コロナウイルスの流行により、イベントやキャンペーンなどの広報・マーケティング活動の中止・見直しが続いた2020年上半期。東南アジアではサーキットブレーカーや緊急事態宣言などの自粛期間、そして感染拡大を予防するためのさまざまなルールのもと生活を経験して、人々の生活はどのように変わり、今後の企業の広報活動に影響していくのでしょうか。 

 今回は広報の視点で、消費者、メディア、企業にみられる変化を、事例を交えながら紹介し、企業がどのようにステークホルダーとのコミュニケーションを変化・対応していくべきかを考察したいと思います。今回のブログでは、メディアの変化についてご紹介いたします。

デジタルシフトの加速と収益多様化への動き
 広告収入の激減や、消費者のオンライン消費がさらに進んだことで、紙媒体の縮小・衰退が加速しました。ベトナムでは、ナショナル新聞Viet Nam Newsを含む4媒体の紙面、フィリピンでもナショナル新聞の2紙Malaya Business InsightやManila Standard Todayなどが廃刊を発表しました。紙面のデジタル化はこれまでもずっと求められておりましたが、準備ができていなかった媒体にとっては今回のパンデミックが「ウェイクアップコール」となり、デジタルシフトが余儀なくされた状況です。このように購読者や広告収入の減少に苦しむメディアが多い中、香港発のリージョナルメディアSouth China Morning Postの電子版は8月から有料にすると発表しました。同様のリージョナルメディアであるThe Straits TimesやNikkei Asian Reviewも、有料のコンテンツを提供しており、有益なコンテンツは有料で提供し、高品質なジャーナリズムを維持するべく、収益源を多様化していく動きがみられます。

フェイクニュース削減へのメディアの取組み
 オンラインメディアの消費が顕著になった一方で、メディアのクレディビリティ(信頼度)が更に重要になったことも事実です。不明確な事が多い未知のウイルスに対して「XXを飲むと新型コロナウイルスの予防になる!」「マスクをしても感染を防ぐことはできない」など、さまざまな憶測やデマともいわれるような記事が頻出し、読み手が身をもって信用できる情報を求めるようになったかと思います。例えば世界三大通信社であるAFPは、2019年は年間で1000万PVであったのが2020年3月は月間で800万PVを達成しており、トラディショナルなメディアを好んで読者の増加傾向がみられます。

 また、偽情報を間違って扱わないよう、AFPもさまざまな取組みを行っており、例えばAFP通信は噂やデマなどの偽情報をなくすファクトチェックの体制をつくり、新型コロナウイルス関連ではこれまでに600以上の偽情報のストーリーをボツにしているそうです。

タレントとYouTuberの境界線の消失
 シンガポールの人気ライフスタイルメディアThe Smart Localでは、YouTubeやInstagram Storiesの更新頻度が以前よりも高くなっています。記者や編集のスタッフが演者として、オリジナル恋愛ドラマに出演したり、ゲーム実況や試食などの企画ものに積極的に参加したりと、記者・編集者個人のSNSアカウントを紐づけており、メディアスタッフのタレント化が目立っているように思います。


The Smart Local のYouTube動画リストの一部 

 これまで、タレントはテレビ番組に、YouTuberはYouTubeに、とそれぞれの主戦場が分かれていたかと思いますが、最近ではタレントがYouTubeチャネルを開設したり、YouTuberがテレビや映画に進出したりと境界線がこれまで以上になくなっているように思います。さらにThe Smart Localの例のように、これまで裏方として番組をプロデュースしていたような編集スタッフやInstagramインフルエンサーが動画コンテンツの演者として活躍するようになったことも事実かと思います。

ECサイトの本格的なメディア化


LazadaとMediacorpのナショナルデイに向けたコラボ企画の宣伝素材

 東南アジア大手ECサイトLazadaは近年「Shoppertainment」という、オンラインでのお買い物体験にエンターテイメント性を加え、消費者の購買意欲を刺激するようなプロジェクトを数々行っております。昨年は創業7周年記念の特大セール時に、アプリ内のライブストリーミング機能を使い、東南アジア向けにイギリスの人気歌手Dua Lipaなどが出演するライブコンサートを配信しており、ただのオンラインショッピングをする場所ではなく、さまざまなコンテンツを楽しめる場所として成長しています。
また最近ではシンガポール唯一のテレビ局であるMediacorpとLazadaが8月8日のシンガポール国立記念日に合わせた大規模セールに向け、共同でキャンペーンを実施しています。主なキャンペーンの内容としては、Mediacorp所属のセレブやインフルエンサーが、Lazadaのサイト内の番組「Guess It Game」(番組視聴者の方に紹介される商品の金額を当ててもらうゲーム式の番組)に出演したり、Mediacorp傘下のChannel News AsiaやChannel5などのテレビ番組やラジオでも、Lazadaアプリを開いてスマホを揺らすとバウチャーに変換が可能なコインを獲得できるキャンペーンを行いました。トラディショナルメディアの代表的存在であるテレビメディアが、このようにECサイトとほとんど同等の立場で、このようなコラボレーションをするのは新しいメディアの在り方を象徴している出来事ではないでしょうか。

 次回のブログでは東南アジアのウィズ/アフターコロナ下で広報・マーケティング担当者が求められていることをご紹介いたします。

 

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