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2020/11/05

東南アジアのウィズ/アフターコロナの広報活動 ~消費者の変化~

こんにちは、シンガポールオフィスの谷です。今回は、先月発行のシンガポール商工会議所の会報に寄稿した記事を抜粋して、ご紹介したいと思います。

新型コロナウイルスの流行により、イベントやキャンペーンなどの広報・マーケティング活動の中止・見直しが続いた2020年上半期。東南アジアではサーキットブレーカーや緊急事態宣言などの自粛期間、そして感染拡大を予防するためのさまざまなルールのもと生活を経験して、人々の生活はどのように変わり、今後の企業の広報活動に影響していくのでしょうか。

今回は広報の視点で、消費者、メディア、企業にみられる変化を、事例を交えながら紹介し、企業がどのようにステークホルダーとのコミュニケーションを変化・対応していくべきかを考察したいと思います。今回のブログでは、消費者の変化についてご紹介いたします。

Eコマースの浸透
新型コロナウイルスをきっかけに、新しい生活様式のひとつとして東南アジアではEコマースが大きく浸透しました。東南アジア全体で昨年同期比約2倍のオンラインショッピングの売上比率を記録しています。

(東南アジアにおけるオンライン販売の成長率(出展:The Straits Times

 シンガポールでは、これまでは飲み物や洗剤など一部の重いものだけをアリババグループのRedmartなどのECサイトで購入していましたが、自粛期間に初めて野菜や果物などの生鮮食品を購入したという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。Bain & Companyが行った東南アジア主要6カ国を対象に行った調査によると、全体の42%がはじめて生鮮品などの日用品もオンラインで購入するようになり、そのうち83%が自粛期間が終わってもオンラインでの購入を継続すると回答しており、オンラインショッピングは、今後も継続して積極利用される新たな習慣になると言えるかと思います。

 Eコマース周辺の動きとしても、シンガポール政府は約5億シンガポール・ドル(約385億円)、マレーシア政府は約2億シンガポール・ドル(約155億円)を企業のデジタラゼーションに投下すると発表しており、大手ECサイトであるLazadaやShopeeも、「Lazada University」や「Shopee University」などのプログラムを準備し、消費者の急速なEコマースのニーズに向け企業をサポートできるよう体制を整えているようです。

エンターテイメント・ヘルスケア分野のサービスの成長
 オンライン化は、日用品の購買にとどまらずさまざまな新しいサービスにも波及を見せています。新しいトレンドとしては、エンターテイメントやウェルネスの分野でのサービスが大きく成長しています。
 エンターテイメントでは、動画ストリーミングサービスNetflixが2020年4-6月でグローバル新規有料会員数を1,010万人増やし、市場予測を400万人ほど上回る結果になったように、動画コンテンツの消費が凄まじく伸長しました。これに呼応するように東南アジアではローカルコンテンツの発信が積極的になりました。

 Netflixでは8月より、合計106ものシンガポール発の映画や唯一のテレビ局Mediacorpオリジナル番組の配信を開始しており、スーパーアプリGojekの動画ストリーミングサービス事業「GoPlay」でも、ローカル向けコンテンツの充実化を行っており、NYの高校生の破天荒なハイスクール生活を描いた大ヒットTVシリーズのローカライズ版「Gossip Girl Indonesia」を発表しており、東南アジアでのローカルコンテンツの拡充が目立ちました。

Netflixのシンガポールオリジナルコンテンツ(参照:TODAY

 一方でヘルスケア分野では、単に感染症予防に向けて免疫力をつけたいという方だけでなく、心を満たすためやQOL向上に向けてなどさまざまな目的で健康を意識するようになった人が多くなりました。実際にシンガポール単体でヘルスケアは2020年単年で、300億シンガポール・ドル(約2.3兆円)の市場があるといわれています。

 常に新しいサービスが参入し競争の激しい分野ですが、シンガポールでは世代によって人気のあるヘルスケアサービスに偏りがあるのが特徴的です。例えば18-24歳の年齢層は学業や友人間のストレスから、「Sleeptown」(睡眠管理)、「Deepstash」(生産性向上)など、メンタル・ウェルネスに関連したものが多かった一方で、25-34歳の年齢層は身体的な健康を優先しており、「Thenx」や「Down dog」などのフィットネスアプリが人気です。理由は痩せたい・美しくなりたいなどの自分に自信をつけるためという理由が主で、同時に趣味や美容などのサービスも人気のようです。35-44歳の年齢層では家族やキャリア中心の生活になってしまうため、「Fitbit」(フィットネス)や「Blinkist」(要約読書)など、ちょっとした合間に効率的に運動ができたり、学べたりするサービスが人気です。最後に、44-54歳の年齢層は何よりも健康メンテナンスが重要で、「GETGREAT」や「Health365」など、老舗保険代理店Great Eastern Lifeやシンガポール健康増進局が管理している信頼度の強いフィットネスサービスを利用する方が多いようです。

購買心理の変化
 オンラインでの消費が積極的に行われ、新しいモノやサービスを試すことに抵抗がなくなっている一方で、予測不能の将来に向け、東南アジアの約60%の人々が貯蓄を増やしたいと回答しており、消費者は不要不急の買い物は避け、「本当に価値のあるもの(Money for Value)」の志向が強くなっています。実際に老舗ブランド(Established company)での購入を42%が希望しており、東南アジアの人々は従来からデジタルが浸透していることから新しいブランドを試す傾向が強くありましたが、このところ老舗ブランドが実店舗だけでなく、オンラインでの流通チャネル・体制も確立し始めたこともあり、老舗ブランドの人気が高まっているようです。

 また、外出規制に加え、在宅勤務の導入により、「巣ごもり消費」が増加したことも特筆すべき事実かと思います。家にワークスペースを作るためのモニターやオフィスチェアなどのオフィス器具、そしてSwitchやPS4などのゲーム機器やヨガマットやダンベルなどの運動器具などは、特に大きく売り上げを伸ばした分野です。「規制が終わっても、規制前よりも家で過ごす時間を増やしたい」と回答した東南アジアの人々はアメリカと比較して1.5倍も多く、今後も「巣ごもり消費」は加速していくと考えてもよさそうです。

 次回のブログでは東南アジアのウィズ/アフターコロナでのメディアの変化についてご紹介いたします。

※出展:https://www.bain.com/insights/how-covid-19-is-changing-southeast-asias-consumers/

 

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