プラップPRジャーナル
PRAP PR JOURNAL

企業の課題を解決する企画は、どこから生まれるのでしょうか。そのヒントは、社会課題だけでなく、生活者が日々感じている小さな困りごとにあるかもしれません。
プラップジャパンのプランナー・久保田澄丸が「第18回 販促会議 企画コンペティション」で審査員個人賞を受賞しました。東急エージェンシーの石川裕也氏と共同で考案し、小学校の先生の日常に着目した「オクスリチロル」。受賞企画の背景から、企業の相談に向き合う姿勢、AI時代に人が企画を考える価値まで、プラップジャパンの企画力を支える考え方を聞きました。
参考:https://www.prap.co.jp/topics/article/hansoku_1013/
久保田 澄丸
プラップジャパン コミュニケーションサービス統括本部 戦略企画部/クリエイティブPRコレクティブ SHAKE所属
新卒入社3年目。プランナーとして企業のコミュニケーション戦略や企画立案に携わる。
今回受賞したコンペの課題は、チロルチョコを通じて「小学校の先生を笑顔にする」こと。
子どもたちを笑顔にすることを大切にしてきたチロルチョコですが、子どもたちの成長を支える先生たちにも目を向けたアイデアが求められました。
-今回受賞した「オクスリチロル」は、どのように生まれたのでしょうか。
久保田:販促コンペでは「知ってほしい」「買ってほしい」という課題も多い中で、「笑顔にする」というお題は珍しいと感じました。人の気持ちを考える点でPRの仕事に近いものを感じ、取り組みたいと思いました。
まず着目したのは、小学校の先生の忙しさでした。子どもたちと過ごす時間が長く、甘いものを食べて気分転換をしたくても、そのタイミングを取りにくいのではないか。子ども関係の仕事をしている知人にヒアリングをすると、実際に「子どもたちの前ではお菓子を食べにくい」という話が出てきました。
そこで考えたのが、食品であることを明記したお薬風のパッケージと、先生の気持ちに寄り添うメッセージを組み合わせた「オクスリチロル」です。チロルチョコならではの遊び心を生かして、先生がほっとひと息つけるきっかけを届けたいと考えました。
様々なアイデアが出たのですが、その中で大切にしたかったのは、「先生に無理をさせないこと」です。
企画のために、当事者を置き去りにしたくない。現場の人がどう感じるかを優先して考えるのは、普段のPRの仕事でも同じで、今回も自然とその考え方になっていたのだと思います。「オクスリチロル」は、先生の抱える課題を一度に大きく解決するものではありません。それでも、少し気持ちが軽くなったり、笑顔になったりする人はいるはずです。
誰かに無理をさせることなく、日常の中に小さな変化をつくりたいと思いました。


-アイデアを形にする上で、どのようなことを意識しましたか。
久保田:「先生を笑顔にする」という課題は、心温まる方向のアイデアが集まりやすいと思いました。だからこそ、「実際には、こういうことに困っているのではないか」という、自分たちが本当にそう思えるところから出発したかったんです。
また、着想が似ていても、実現する場面をどこまでイメージできているかで、企画の伝わり方は変わると思っています。アイデアを出して終わりにせず、具体的にどういう形にするかまで詰めることが大切だと感じています。授賞式の会場では、先生の心を癒やす方向のアイデアが複数ある中で、「振り切っていたのがよかった」と言っていただきました。
-こうした企画づくりは、実際にプラップジャパンに依頼のあるPRのプランニングにも共通しているのでしょうか。
久保田:販促コンペもPRのプランニングも、目指しているのは「人の心を動かして、行動を変えること」です。PRでも、知ってもらった先で見方や行動が変わることを目指すので、ゴールはとても近いと感じています。
その上で、自分が生活者の立場になったときに、「この企画で本当に心が動くか」を考えることを大切にしています。その基準は、コンペでも実務でも変わりません。
-実際に、プラップジャパンにはどのような相談が寄せられていますか。
久保田:最近では、テレビなどのメディア露出について、現状への漠然とした不満や相談をいただいたり、個々の商品や取り組みだけでなく、企業そのものが社会に十分に伝わっていない、という相談もあります。
どこに・どう情報を出すかという話に加えて、そもそも企業として何を伝えるべきかを考えることが大切だと思っています。
-そうした相談に向き合うとき、大切にしていることは何ですか。
久保田:企業について丁寧に知ることです。生活者としての視点は自分の中にあるので、企業のことも理解したい。まず、その企業の共感者になってみることを大切にしています。
企業の歴史や理念、担当者の思いを知り、その中で自分が本当にいいと思うところを見つける。そこが見つかると、クライアントと仲間になれる感覚があります。理解を深めるために実際に製品を購入して使ってみたり、その場所に行ってみたりもしていますね。同じ立場で悩みを共有することが、企業と社会の両方にとっていい企画をつくる第一歩だと思います。
「嘘をつかない」ということも意識しています。自分が本当にいいと思えているからこそ、提案に熱を込められる。そして、まずは目の前の担当者の心を動かしたいと思っていて、企業のことをよく知る担当者の心が動くことが、その先の生活者にも届く企画にもつながると考えています。
-PRのプランニングならではの面白さとはどのようなところでしょうか?
久保田:まず、企業のことを丁寧に理解して、生活者や社会との関係を考える。その上で、何を伝えるべきか、どうすれば自然に伝わるかを考えていくと、必要な取り組みがPRにつながっていることが多いと感じます。
今回の「オクスリチロル」も、先生の困りごとと、チロルチョコが持っている魅力を一緒に考えた企画です。
企業のためになることと、受け取る人にとってうれしいこと。その両方を考えられるところが、PRの面白さだと思います。
無理なく企業のことが伝わり、生活者との関係が育っていく。そうして生まれた関係は、長く続くのではないでしょうか。
-AIが身近になる中で、人が企画を考えることには、どのような価値があると思いますか。
久保田:AIを使えば、それらしい企画をつくれるようになっていますよね。でも便利だからこそ、「この企画をつくった人は、本当にこう思っているんだな」と感じられるものに、心が動くのではないかと思います。
今回の販促コンペの授賞式でも、上位賞の企画が発表されるたびにワクワクしました。作った人の視点や、そこに込めた熱が伝わってくるんです。自分も、そういった企画をつくりたいと思いました。
自分が何を見て面白いと思うか。何に心が動いて、何を嫌だと感じるか。個人的な好き嫌いも含めて、そうした感覚は、生きていく中で生まれるものです。そこに価値があると思っています。
-そうした自分ならではの感覚は、企画力にどうつながるのでしょうか。
久保田:自分が本当に感じたことや、心が動いたことを、自分の中だけで終わらせず、クライアントや社会のためにどう使っていくか。それが、企画力なのではないでしょうか。
自分らしい人生を生きることが、結果として、いい企画にもつながっていくと思っています。これからも、自分の実感や熱を大切にしながら、人の心が動く企画をつくっていきたいです。
企業の課題と、生活者の日常にある小さな困りごと。その両方に向き合い、互いにとってよりよい関係をつくることが、PR発想の企画づくりの原点です。
今回の「オクスリチロル」から見えてきたのは、当事者の声に耳を傾け、企業や商品が持つ魅力と結びつけることで、人の心を動かすアイデアが生まれるということでした。
AIを活用できる時代だからこそ、自分自身の経験から生まれる気づきや、誰かの気持ちを想像する人間らしい発想が求められています。
生活者の小さな「困った」に目を向ける姿勢は、企業と社会の新しい接点を生み出すヒントになるのではないでしょうか。
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