プラップPRジャーナル
PRAP PR JOURNAL

聞いたことはあるけれど、聴いたことはない。ポッドキャストに対して、そんな距離感を持っている方も多いのではないでしょうか。
私自身、ポッドキャストに出会ったのは大学生時代です。それ以前から芸人のラジオ番組は聴いていましたが、先輩からおすすめの番組を教えてもらう中でポッドキャストというものを知り、夢中になりました。
実はここ数年、ポッドキャストは若者を中心にじわじわと人気を伸ばしています。
PR・広告業界にいると、世代別のメディア利用時間をまとめたグラフを目にする機会は多いのですが、 「ポッドキャスト」という文言が「テレビ」や「新聞」とともに並んでいることは少ないです。ポッドキャストは「ラジオ」や「インターネット」のデータに包含されているのかもしれません。
しかし私が本記事を通して主張したいのは、PRの観点からみると、今やポッドキャストにはそれ単独で、テレビや新聞といったメディアに並ぶ可能性があるということです。では、なぜポッドキャストが今後さらに存在感を高めていくと考えられるのか、PRの視点から考察してみます。
ポッドキャストの人気はデータにも表れています。
オトナル・朝日新聞社の調査によると2025年のポッドキャスト月間利用率は、18.2%。 2020年の当調査開始時は 14.2%だった利用率は、堅調な成長を続けているといえるでしょう。
特に年代別のポッドキャスト利用率の調査では15〜19歳で40.5%、20代で28.8%がポッドキャストユーザーであり、若年層で高い水準となっています。
また、他メディアと比較したとき、全年代の利用率はTikTokにつぐ水準であり、ラジオやNetflixを上回っています。15〜29歳に範囲を限定すれば、TVerやTikTokをも凌ぐ利用率です。
実は2004年に誕生し、2005年に日本に上陸しているポッドキャスト。なぜ今若者を中心に人気を博しているのでしょうか。
ポッドキャストは「画面を見なくてもよい」という特性ゆえに、日常のすきま時間に入り込むことができます。
生活を営む時間がそのまま情報をインプットする時間へと変化します。忙しさに追われる現代人と、「ながら聴き」は高い親和性を持っているといえます。
また技術や編集力、映えが必要とされることの多い文字や映像による発信に比べ、ポッドキャストは声そのものが表現です。完成度の高さよりも、語りの温度や誠実さが価値を持ち、そこに番組ごとの独自性が生まれるのです。
さらに、オンデマンドという特性もポッドキャストの大きな魅力だと思っています。
私は芸人の番組をよく聴くのですが、番組によってはリスナーとの間に共有されたお決まりのノリや空気感があることも多いです。
ラジオの場合、途中から聴くとその流れについていけず、番組に入り込みづらいことがありますが、ポッドキャストは過去の回をさかのぼって聴くことができるため、新しい番組を聴き始めやすいという魅力があります。
特定の時間に番組が編成され、リスナーはその放送時間にアクセスすることで同じ内容を聴くラジオは、災害情報やニュース、深夜番組のライブ感、投稿コーナーを通じた一体感など、「今この瞬間を誰かと共有している」という感覚を強く持つメディアです。
一方でポッドキャストは、「好きなときに、好きな場所で、好きなテーマを聴く」ことを前提にしたオンデマンド型の音声メディアです。
この構造の違いは、コンテンツの性質にも大きく影響しています。ラジオは不特定多数の聴取者に向けて開かれた番組であるため、一定の公共性や汎用性が求められるのに対し、ポッドキャストは、必ずしも万人向けであることは求められません。
むしろ、ある特定の関心や価値観を持つ人に向けて、深く狭く届けることができます。ニッチなテーマや個人的な視点、長尺の会話が成立しやすいのは、このメディアが最初から「自分で選んで聴く」ことを前提としているからです。
ポッドキャストはこれまで可視化されなかった無数の個人の声を受け止める場になっていくのではないでしょうか。
大きなメディアが拾いきれないニッチな関心、小さな経験、個人的な悩みや喜びをリスナーが選び取り、共感するための場になるはずです。
この「広く浅く」ではなく「狭く深く」という性質こそ、広告やPRの観点から見たときに大きな意味を持つと考えられます。
また近年は、企業やメディアがポッドキャストを活用する動きも広がっています。
SNS上で番組の感想が共有されたり、企業やブランドへの理解が深まったりするなど、ポッドキャストは単なる娯楽にとどまらない存在になりつつあります。
では具体的に、ポッドキャストはどのような場合のPRに向いているのでしょうか。
リスナーの特性と企業の活用事例から、三つの方向性が見えてきます。
映像や写真を使わず、あえて声だけで語ることで、行間や想像の余地を残す。
文字や短尺動画では伝えきれないものづくりの姿勢や世界観を届ける手段として、ポッドキャストが選ばれています。
ポッドキャストでは、リスナーが番組の空気感や語り手の価値観に継続的に触れることで、番組を中心とした「小さな共同体」のような関係が生まれます。
その中で紹介される商品やサービスは、突然差し込まれる広告というより、信頼している語り手からの自然な情報として受け止められやすい。
番組の文脈に合った形で届けることで、広告への抵抗感が和らぎ、生活者との距離を縮める手段になり得ると感じます。
ポッドキャストは、求人票や採用サイトでは伝えづらい社風やメンバーの人柄を、「生の声」を通じて届けられます。
経営者の考えや社員の働き方を音声で発信する企業も増えており、求職者にとっては、その会社の"温度"を感じ取る貴重な手がかりになります。
何をしている会社かだけでなく、どんな想いで事業を営んでいるのか。その文脈を伝えるうえで、声というメディアは相性が良いのだと思います。
専門領域での信頼構築にも効果的です。
大学や研究機関が研究者の語りを発信する番組のように、ポッドキャストは専門的な知見をじっくり伝えるのに向いています。20〜40分という長さのあいだ、リスナーは集中して耳を傾けます。
すぐに拡散する性質ではありませんが、繰り返し聴かれることで、語り手や組織への信頼が積み上がっていきます。
いずれの場合も共通しているのは、ポッドキャストが「一度の認知」よりも「継続的な関係」に強いメディアだということです。
配信者視点からみると、ポッドキャストはコストと参入ハードルが低いという魅力があります。音声のみによる配信なので、他の媒体に比べて安価で制作が可能です。録音環境さえあれば配信することが可能なのです。
ポッドキャスト文化はこれまで、ラジオの延長線上にあるものとして捉えられがちでした。しかし現在のポッドキャストは、放送局や大手メディアだけのものではありません。誰もが自分の言葉を発信できるこの時代、より個人的で、より生活に密着した表現手段といえるでしょう。
今後、AIの進化によって翻訳、要約、レコメンドの精度が向上すれば、音声コンテンツはこれまで以上に発見されやすくなり、国境や言語の壁も低くなっていくと思います。
一方で、そうした効率化が進むほどに、人間の声が持つ不完全さや偶然性が、より強い魅力として浮かび上がります。整えられた情報ではなく、揺らぎのある語りを聴きたいという需要は強くなっていくのではないでしょうか。
冒頭で「ポッドキャスト」は「テレビ」や「新聞」といったメディアに並ぶ可能性を持つ、と述べましたが、巨大なマスメディアとして並び立つというより、小さく深い共同体を無数に生み出していく文化として広がっていくだろうと考えています。
万人に届くことよりも、必要としている誰かに深く届くこと。そうした価値観が広がる中で、ポッドキャストは現代社会における「つながり」の再定義を担っていく重要なメディアとしての立ち位置を確立するのではないでしょうか。
ポッドキャストは、情報発信の場である一方、関係性を育てる場でもあるといえます。
多くの人に一斉に届けるマス型の発信とは異なり、一人ひとりの生活の中に入り込み、継続的で深い接点を生むのです。
すぐに大きな拡散にはつながらなくても、繰り返し聴かれることで理解が深まり、企業やブランドに対する認識が少しずつ形づくられていきます。
単発の認知を獲得することだけでなく、生活者と中長期的な信頼を築いていくことも、広報の大切な役割です。
ポッドキャストはその文脈に非常によく合ったメディアだといえるのではないでしょうか。これからの広報は、情報を正確に伝えることだけではなく、社会や生活者とどうつながるかを考えることが求められると考えます。
ポッドキャスト文化の広がりとは、新しい発信手段というより、信頼や共感のつくり方、つまりコミュニケーション手段の広がりと捉えられるのです。自社の魅力を「狭く深く」届ける手段として、声というメディアを検討してみてはいかがでしょうか。
プラップジャパンでは、企業のコミュニケーション課題に合わせた最適な手法のご提案から、媒体特性を活かしたコミュニケーション設計、その実行までを一貫してご支援しています。
【参考】
株式会社オトナル、株式会社朝日新聞社
第6回ポッドキャスト国内利用実態調査(2026.2月)
© Basic Inc.